引越しの準備を進める中で、ひときわ大きな問題として立ちはだかるのがベッドの扱いです。
引越しの時ベッドはどうする?運ぶか捨てるか、という根本的な悩みから、そもそもベッドを解体せずに引越しできるのか、特にサイズが大きいセミダブル・ダブルベッドの注意点は何か、といった疑問は尽きません。
また、自分で運ぶ方法と解体の手順を調べるものの、現実的なのか判断がつかないこともあります。
いっぽうで、ベッドを引越しする費用はいくらになるのか、その料金体系も気になります。
できるだけ楽に運ぶならベッドの解体してくれる業者の利用が賢明ですが、ベッドだけ引越し業者を利用する選び方にもコツが必要です。
さらに、運搬が難しいマットレスの梱包と運び方、いっそ買い替えとベッド引取サービスを利用する方が得策なのか、判断材料が欲しいところです。
この記事では、ベッドの引越しに関するあらゆる疑問を解消し、ご自身の状況に最適な選択ができるよう、具体的な方法、費用、注意点を具体的に解説します。
- ベッドを運ぶか処分するかの判断基準
- 自分で運ぶ場合と業者に依頼する場合の費用相場
- ベッドの解体・梱包の具体的な手順
- 買い替えや処分をお得に行う方法
ベッド引越しの基本:運ぶ方法と費用
引越しの時ベッドはどうする?運ぶか捨てるか

引越しが決まった際、ベッドを運ぶか、それとも処分して新居で買い替えるかは、多くの人が悩むポイントです。
この判断は、ベッドの使用年数、運搬費用、そして新居のスペースという3つの要素から総合的に考える必要があります。
まず、ベッド、特にマットレスの寿命を考慮することが大切です。
一般的なマットレスの寿命は5年から10年程度とされています。
もし長年使用していて、寝心地の変化を感じている場合は、引越しを機に新しいマットレスを検討することも、快適な睡眠環境を見直す一つの選択肢と考えられます。
次に、運搬費用と買い替え費用を比較します。
ベッドの運搬は、解体・梱包・組立作業が伴うため、引越し費用の中でも大きな割合を占めることがあります。
特に、引越し先が遠距離であったり、クレーンでの吊り上げ作業が必要になったりする場合は、運搬費用だけで数万円に上ることも珍しくありません。
新品のベッドの購入費用と、処分費用(数千円)の合計が、運搬費用を下回る、あるいは同等であれば、買い替えが有力な選択肢となります。
最後に、新居のスペースを確認しましょう。
旧居に合わせて購入したベッドが、新居の寝室の広さや間取りに合わない可能性もあります。
無理に運び込んでも生活動線を圧迫してしまうなら、新居に最適なサイズのベッドを新しく購入する方が、快適な生活を送れるはずです。

ベッドを解体せずに引越しできる?

結論から言うと、ほとんどのベッドは解体しなければ引越しできません。
まれに解体せずに運べるケースもありますが、それは例外的な状況に限られます。
多くの組み立て式ベッドは、購入時に解体された状態で搬入され、室内で組み立てられています。
そのため、完成品のままでは、寝室のドア、廊下の曲がり角、玄関、そして集合住宅の場合は階段やエレベーターを通過させることが物理的に不可能です。
無理に解体せずに運ぼうとすると、ベッド本体はもちろん、家の壁や床、ドア枠などに深刻な損傷を与えてしまうリスクが非常に高くなります。
引越し業者は家屋の保護(養生)を行いますが、そもそも通過できないサイズであれば、解体を大前提として作業を進めます。
例外的に解体せずに運べる可能性があるのは、折りたたみ式ベッドや、非常にコンパクトなパイプベッドなどで、かつ搬出入経路に十分な広さが確保されている場合のみです。
また、アンティーク家具や特殊な一体型ベッドなど、構造上「解体できない」ベッドも存在します。
この場合、通常の搬出入が不可能であれば、窓からクレーンで吊り上げて搬出入することになり、高額な追加費用(一般的に2万円〜3万円程度)が発生します。
セミダブル・ダブルベッドの注意点

シングルベッドと異なり、セミダブルやダブルベッド、それ以上のサイズの引越しでは、難易度が格段に上がります。最大の注意点は「マットレスの搬入経路」です。
ベッドフレームは解体すればパーツごとに運べますが、マットレスは基本的に解体も折り曲げることもできません。
特にスプリングが入ったマットレスは、無理に曲げると内部構造が破損し、使用できなくなる恐れがあります。
そのため、新居の搬入経路を事前に厳密に計測しておくことが不可欠です。
確認すべき箇所は、玄関ドアの幅と高さ、廊下の最も狭い部分の幅、廊下の曲がり角(L字クランクなど)、階段の幅と踊り場のスペース、そしてエレベーターの内寸(特に扉の高さと奥行き)です。
ダブルベッドのマットレスの幅は約140cm、長さは約195cmあります。
この長方形が、搬入経路を立体的に通過できるかをシミュレーションする必要があります。
例えば、階段の途中で回転させられるか、エレベーターに斜めにしてギリギリ入るか、といった確認が求められます。
もし計測の結果、通常の搬入が不可能と判断された場合は、前述の通りクレーンによる窓からの吊り上げ搬入を検討することになります。
これは引越し業者への見積もり依頼時に、必ず現地確認してもらい、追加費用を含めた総額を確認しておく必要があります。
自分で運ぶ方法と解体の手順

引越し費用を少しでも節約するために、ベッドを自分で運ぶことを検討する方もいます。
しかし、これは多大な労力と時間を要し、家やベッド本体を傷つけるリスクも伴うため、相応の準備と覚悟が必要です。
必要な道具
まず、解体と梱包のために以下の道具を揃える必要があります。
- ドライバー(プラス・マイナス、電動ドライバーがあれば尚良い)
- 六角レンチ(ベッドのネジに合うサイズ)
- 軍手(怪我防止のため)
- ネジやワッシャーを入れる小袋(ジップロックなど)
- 部品をまとめる紐や養生テープ
- 緩衝材(エアパッキン(プチプチ)、古い毛布、段ボールなど)
解体の手順
- まず、シーツや布団を全て取り除き、マットレスをベッドフレームから下ろします。
- 次に、床板(すのこなど)を取り外します。ネジで固定されている場合は外してください。
- ベッドの組立説明書が残っていれば、その逆の手順で解体するのが最も確実です。無い場合は、まず解体前の状態をスマートフォンなどで多角的に撮影しておくと、再組立の際に役立ちます。
- 一般的に、サイドフレーム、フットボード、ヘッドボードの順に解体していきます。
- 外したネジやワッシャー、小さな部品は、どの部分で使われていたかが分かるように、小袋に分けてマジックで明記しておきましょう。これを怠ると、再組立が非常に困難になります。
運搬の注意点
解体したフレームの各パーツや、マットレスは、傷がつかないように緩衝材(毛布やエアパッキン)で丁寧に包みます。
特に角の部分は念入りに保護してください。
運搬には軽トラックやバン以上の大きさの車(レンタカーなど)を手配する必要があります。
マットレスが平積みできる荷台サイズかを確認しましょう。
そして最も大切なのは、必ず2人以上で作業することです。
ベッドのパーツ、特にマットレスは大きく重いため、1人での運搬はほぼ不可能です。
無理な作業は怪我につながる可能性もあるため、安全には十分に配慮し、少しでも不安がある場合は専門業者の利用も検討しましょう。
自分で運ぶ場合、万が一の破損等は自己責任となる点も理解しておく必要があります。

ベッドを引越しする費用はいくらですか?料金目安

ベッドの引越しにかかる費用は、「誰が運ぶか」「距離」「ベッドのサイズや種類」によって大きく変動します。
引越し全体の一部として業者に依頼する場合
他の荷物とまとめて引越し業者に依頼する場合、ベッドの運搬自体は基本料金に含まれていることが大半です。
ただし、ベッドの「解体」と「組立」はオプション料金として別途請求されるケースがあります。
- 解体費用(目安):約2,000円~5,000円
- 組立費用(目安):約3,000円~8,000円
また、前述の通り、クレーン作業が必要な場合は、別途20,000円〜40,000円程度の追加費用が発生することが一般的です。
自分で運ぶ場合
最も安価な方法ですが、前述の通り手間とリスクが伴います。
- レンタカー代(軽トラックやバン):約5,000円~15,000円(時間による)
- ガソリン代
- 梱包資材費(緩衝材、テープなど):数千円
これらの点を踏まえ、見積もりを取得する際は、ベッドの解体・組立作業が含まれているか、追加料金(クレーン作業など)が発生する可能性はないかを明確に確認することが重要です。
ベッド引越しの選択肢:業者利用と処分
楽に運ぶならベッドを解体してくれる業者へ

ベッドの引越しで最も手間がかかるのが「解体」と「再組立」です。
この作業を楽に、そして確実に行う最善の方法は、引越し業者に依頼することです。
引越しのプロは、多種多様なベッドの構造を熟知しており、専用の工具を使って迅速かつ安全に作業を行います。
自分で解体する場合、ネジを紛失したり、どのパーツがどこに対応するかわからなくなったりするリスクがありますが、業者に任せればそうした心配は無用です。
また、万が一作業中にベッドや家屋に傷をつけてしまった場合でも、引越し業者は賠償責任保険に加入しているため、補償を受けられる安心感があります。
これが自力での作業との大きな違いです。
ただし、業者に依頼する際には注意点もあります。特に、IKEA(イケア)製や一部の海外メーカー製のベッドは注意が必要です。
そのため、引越し業者によっては作業を断られたり、作業はするが破損や強度低下に関する補償は対象外(免責)となったりするケースが少なくありません。
見積もり時には、必ずベッドのメーカー名や種類(可能であれば写真や型番)を正確に伝え、解体・組立作業に対応可能か、補償の範囲はどうなるかを事前に確認しておきましょう。
【参照:国土交通省 「標準引越運送約款」】
ベッドだけの引越し業者の選び方
引越し荷物がベッド(とマットレス)だけ、という場合でも、専門業者に運搬を依頼することが可能です。
引越し業者と配送業者ではサービス内容、特に「解体・組立」作業の扱いに違いがあるため、ご自身のニーズに合わせて選ぶことが大切です。
ここでは、主要な引越し業者および配送業者が「ベッドだけ」の運搬にどのように対応しているかを比較表にまとめます。
| サービス業者 | 該当サービス名(例) | 解体・組立 | 特徴・注意点 | |
|---|---|---|---|---|
| アーク引越センター | 大物限定プラン | 含まれる(要確認) | ベッドや冷蔵庫など、大型家具・家電1点から依頼できる専用プランが用意されています。 | |
| サカイ引越センター | 小口便サービス (または通常見積もり) | 含まれる(要確認) | 「家具1点だけ」という明確なプラン名は見えにくいですが、荷物が少ない場合の引越しとして見積もり対応が可能です。 | |
| ハート引越センター | 家具・家電1点から (見積もり) | 含まれる(要確認) | 引越し専業業者として、荷物が1点からでも見積もりに応じています。 養生(家屋の保護)なども丁寧に行う傾向があります。 | |
| アート引越センター | 家具移動サービス (または通常見積もり) | 含まれる(要確認) | ベッドの解体・組立を引越し作業の標準サービスとして行っている点が強みです。 ただし、IKEA製など特殊なベッドは要相談です。 | |
| ヤマト運輸 | らくらく家財宅急便 | 別途オプション料金 | 料金はベッドのサイズ(3辺合計)と距離で明確に決まります。 ただし、解体と組立はそれぞれ別途オプション料金が必要です。 | |
| 佐川急便 | 飛脚ラージサイズ宅配便 (またはチャーター便) | サービスによる | 「飛脚ラージサイズ宅配便」は三辺合計260cmまでなどサイズ上限があり、ベッドは対象外の可能性が高いです。 別途チャーター便などで要相談となります。 | |
引越し業者(アーク、サカイ、ハート、アート)に依頼する場合、解体・組立までを基本サービスに含んだ「引越し作業」として扱ってくれることが多いのがメリットです。
いっぽう、配送業者であるヤマト運輸の「らくらく家財宅急便」は、料金体系が明確な反面、解体・組立はオプション(別途有料)となる点が大きな違いです。
佐川急便は、ベッドのような規格外のサイズは通常のラージ便では対応が難しく、他の業者と比較すると選択肢としては優先度が下がる可能性があります。
いずれの業者を利用するにしても、各社のサービス内容や料金体系、オプション(ベッドの解体・組立費用など)は、時期によって変更される可能性があります。
また、お持ちのベッドの種類(例:IKEA製、収納付き、特殊な構造のベッドなど)や、お住まいの地域によっても、対応の可否や料金が異なる場合があります。
引越しで失敗や後悔をしないためにも、ご検討の際は必ず各社の公式ウェブサイトで最新の情報を確認するか、直接見積もりを依頼して、ご自身の状況に合った正確なサービス内容と総額費用を確かめるようにしてください。
【参照:独立行政法人国民生活センター 「引越しサービストラブル」】
マットレスの梱包と運び方

ベッドフレーム以上に運搬に気を使うのがマットレスです。
解体できず、サイズが大きく、さらに汚れや破損に弱いため、適切な梱包が不可欠です。
引越し業者に依頼する場合は、通常、業者が専用のキルティング製マットレスカバーを持参し、それで全体を覆ってくれるため、最も安全で手間がかかりません。
問題は、自分で運ぶ場合です。マットレスを裸のまま運ぶのは絶対に避けるべきです。運搬中に地面に置いたり、トラックの荷台で他の荷物と擦れたりして、確実に汚損します。
自分で梱包する方法
- マットレス専用の梱包カバー(袋):最もおすすめの方法です。ホームセンターやインターネット通販で、マットレスがすっぽり入るビニール製や不織布製の大型カバーが販売されています。これに入れてテープで封をすれば、汚れや多少の水濡れを防げます。
- 大型ラップ(ストレッチフィルム):梱包用の巨大なラップフィルムで、マットレス全体をぐるぐる巻きにする方法です。密閉性が高く、汚れや傷を強力に防げます。
- 古い毛布やシーツ:不要な毛布やシーツでマットレス全体を包み込み、養生テープや紐で固定します。緩衝材の役割も果たしますが、防水性はないため、雨の日はビニールシートを併用するなど追加の対策が必要です。
なお、一般的にウレタンやスプリングマットレスを布団圧縮袋で圧縮することは、内部素材への影響が懸念されるため推奨されていません。
圧縮が可能かどうかは、お使いのマットレスの取扱説明書等で確認することをおすすめします。
買い替えとベッド引取サービス

高額な運搬費用や、解体・組立の多大な手間をかけるくらいなら、引越しを機にベッドを買い替える、というのも非常に合理的な選択です。
買い替えを検討すべきケース
- マットレスを5年〜10年以上使用しており、寿命が近い場合。
- クレーンでの吊り上げ作業(2万円〜)が必要になるなど、運搬費用が高額になる場合。
- 新居の間取りに、今使っているベッドのサイズが合わない場合。
- 前述のIKEA製ベッドのように、解体・再組立てによって強度の低下が懸念される場合。
古いベッドの処分方法
買い替える場合、古いベッドを処分する必要があります。
- 自治体の粗大ゴミ:最も安価な方法です(数千円程度)。ただし、自分で解体し、指定された収集場所まで運び出す必要があります。
- 不用品回収業者:費用は高め(1万円〜)ですが、電話一本で自宅まで来てもらい、解体から搬出まで全て任せられます。引越しの忙しい時期には便利です。
- 引越し業者の引取オプション:引越しと同時に有料で引き取ってくれる業者もあります。見積もり時に相談してみましょう。
購入店の「ベッド引取サービス」
新しいベッドを購入する際に、最も便利なのがこのサービスです。
このサービスの最大のメリットは、「新品の搬入」と「古いベッドの搬出」が一度で完了する点です。自分で粗大ゴミの手配をしたり、不用品回収業者を別途手配したりする手間が一切かかりません。
ただし、「購入する商品と同等品・同数であること」「配送先と引取先が同一住所であること」など、利用には条件があるため、購入時にサービスの詳細を必ず確認してください。
【参照:東京都環境局 「粗大ごみ受付センター」】
まとめ:ベッド引越しを成功させる鍵
ベッドの引越しをスムーズに行うために、この記事で解説した重要なポイントをまとめます。
- 引越し時のベッドは「運ぶ」か「処分・買い替え」かを最初に決める
- 判断基準は「使用年数」「運搬費用」「新居のスペース」
- ベッドの解体・再組立ては引越し業者に任せるのが最も楽で安全
- IKEA製や海外製のベッドは業者が作業を断るか免責になる場合がある
- ベッドを解体せずに運べるのは折りたたみ式など一部のみ
- セミダブル以上のサイズはマットレスの搬入経路計測が必須
- 玄関、廊下、階段、エレベーターの内寸を厳密に測る
- 搬入不可の場合はクレーン吊り上げで追加費用(2万円~)が発生する
- 自分で運ぶ場合は解体・組立の道具と2人以上の人員が必須
- 解体時はネジの紛失防止と写真撮影が組立成功のコツ
- ベッドだけの引越しは「家具専門配送」が確実
- 単身パックはマットレスが入らない可能性が非常に高い
- マットレスは専用カバーや大型ラップで必ず梱包する
- 運搬費用が高額なら「買い替え」も有力な選択肢
- 新品購入時の「ベッド引取サービス」は処分と搬入が一度で済み便利

